初代のマインドストーム(Robotics Invention System, 通称RIS)を長年使っていると、センサやモータを接続するケーブルのゴムがどうしても劣化してきます。 最初の販売から20年経った現在、国内あるいは世界中にどのくらい現役のRISユーザがいるのかよく分かりませんが、 「ケーブルさえ使えればまだ遊べるキットなのになぁ」と思っておられるユーザや、 ネット・オークションなどで中古品を入手したものの現状のまま使うのはちょっと心配、というユーザもいるのではないかと思います。 しかし、LEGO社のサポートもとっくに終了し、2018年現在、国内の販売店からこれらの新品を入手するのはなかなか難しい状況です。
多少でもそういうユーザのお役に立てればと思い、光センサと接続ケーブルを中心に、これまで筆者(松本)が行ってきた修理方法を紹介します。 ただし、カッターや半田ごてを使うので、それなりの危険が伴います。 怪我をされても一切責任を取れませんので、トライされる場合はすべて自己責任・安全第一でお願いします。
目次
最低必要なもの
通常の半田付けに必要な道具に加え、コネクタなどを分解するためにマイナスの精密ドライバーが必要です。以下リストアップしておきます。
あれば便利なもの
ケースは青と濃灰の二つのパーツでできています。 これらは一部接着されているので完全に非破壊で分解するのは難しいと思います。 しかし、なるべく綺麗に分解していきます。
まずケースを裏返すと、青い部品の一部を変形させて爪にしているのがわかります。 まずこの爪のはみ出している部分を切り取ります。
青い部分を全部切り取るのではくて、一段下がったところにはみ出ている部分だけを切り取れば十分です。
写真のような感じで、上からカッターで軽く何度かなぞれば切りとれるはずです。 濃灰の裏蓋にくっついている場合は横からも軽く切り込みを入れます。
6箇所切り取ると下のような写真のようになります。
次に、分解したあとの次の写真を参考に、四隅の接着されている部分を切り取ります。
青と濃灰の境界にカッターの刃を入れ、そぉーっと切っていきます。 一段凹んでいる溝の部分ならどこでもよいというわけではなく、あくまでも青と濃灰の境界を狙って切っていきます。
この時、片方の手でブロックを持ちながら刃を入れていくので、とても危険です。 一気に力を入れるのは厳禁です。 とにかく、力をあまりいれないように、少しずつ確認しながら、何回にも分けて、少しずつ深くカットしていきます。
力を入れると、切り過ぎて中の部品を痛めるだけでなく自分の手も切ってしまうので非常に危険です。とにかく力をあまり入れないように!!!
接着されている箇所が切り離された瞬間、2つの部品の離れるのが感触でわかるはずです。
特に注意しなければいけないのは、上からみて右側の隅です。 ここにはLEDのカバーが附いているので、それを切らないようにします。 実際に、他の隅は接着部分がL字にはめられていますが、ここだけはL字ではありません。
四隅が離れたら、正面(ケーブルのついていない側)からマイナスの精密ドライバを隙間に入れて軽くこじ開けて行きます。 このときも力を入れすぎると部品が変形してしまうので、とにかく左右交互に少しずつ開けていきます。
ところで、濃灰の部品にはもともと下のようなケーブルを止めるための突起がついています。
しかし、この部分はケーブルと固着していることが多く、きれいにはずれることは滅多にありません。 筆者の経験では、この部分が折れずにうまく外れたのは10個に1個あるかないかです。 ですので、この部分を残すのは諦めて、少し力を入れて折ってしまいましょう。 前の4箇所の爪が一応はずれて、後の2箇所の爪もはずれそうであれば、青いパーツを斜めに持ち上げると、パチンと折れます。 この部分がなくても、ケーブルを接着剤で固定すればそれほど問題はないと思われます。 分解できると、次の写真のようになります。
次に、先ほど折れた部分で固定されているケーブルを外します。 固着しているとラジオペンチで引っ張ってもなかなかとれないので、根気よく削り取ることにします。
まず、この止めの真ん中あたりにカッターでV字に切り込みを入れます。 そして徐々にV字を大きくしていくように少しずつカッターで削ります。
ある程度中心部が削れたら、青いパーツと接している横からマイナスの精密ドライバーで少しずつ削って行きます。折れたプラスチックの部品がある程度削れたら次はケーブルを外します。 ケーブルも固着しているので、根気よく少しづつ外します。
この時、てこの原理を使って精密ドライバーでケーブルをグイッと引き上げたいところですが、青いプラスチックもそれほど丈夫ではないので、深いところまでドライバを入れずに、浅いところで何回にもわけて軽く上に持ち上げて行きます。とにかく力をあまりかけないように。
ケーブルが外れたら、あとは中に残っている電線の切れ端やゴムを綺麗に取り除きます。取り除く、といっても実際には精密ドライバーで丁寧に削っていく感じです。導線の破片が残っていると、あとあとトラブルの原因になる可能性があります。
写真が少し見にくいですが、中のゴミを取り去った後の写真です。 この穴は使わないので、綺麗にゴミをとるだけで、中の形が少々変形しても気にしないことにします。
まず古いケーブルを外します。
この時、基盤ホルダーなどが必要ですが、下の例では100円ショップで入手したバイスを使っています。
片方の残ったケーブルをバイスに固定して、片手で基盤をわずかに上方向に引っ張りながら、はんだごてで接続箇所を熱します。はんだが溶ければケーブルがすぐにはずれます。
同様にもう一本のケーブルも外します。 2本とも外れると、次の写真のようになります。
次に基盤をバイスに固定して、はんだ吸い取り線で残っているはんだを吸い取ります。 はんだ吸い取り線をホール部分に当て、上からはんだごてで熱します。 うまく吸い取れないようでしたら、一度はんだを追加して(少し盛り上がる程度)から吸い取るようにするとよいでしょう。
余分なはんだを吸い取れば次の写真のようになります。はんだが残っていると新しいケーブルを差しにくいので、なるべく綺麗に取りましょう。
さらに綿棒に無水アルコールを含ませて軽く拭くと、茶色いフラックスも綺麗にとれて、次の写真のようにピカピカになります。
次に、新しいケーブルの先端の被覆を5mm程度剥がし、導線をねじっておきます。 そして、基盤の表側(部品のついている側)からケーブルを差し込み裏側ではんだ付けをします。
はんだ付けが済んだら、はみ出ている余分な導線をニッパーでカットしておきましょう。
では、もとのケースに基盤を入れ、濃灰の部分もはめて借り組みしておきましょう。 6箇所の穴に爪の部分を入れて軽く押さえればパチンと入るはずです。
反対側のコネクター部分のケーブルを交換した後で、接着剤で固定することにします。
コネクタ部分を分解します。裏返して次の写真のように裏蓋とケースと止めている爪の部分にマイナスドライバーを差します。ここで使用しているのは ANEX No.72 で先端の幅は1.8mmです。 軽く裏蓋を押し下げるようにして、ドライバーを斜めに押して差し込みます。
あまり先端が厚いものだと爪を痛めてしまうので、なるべく先端の厚みの薄いものを使いましょう。 上の写真のようにドライバーの先端がわずかに顔を出す程度で止めます。
さて、ここから少し難易度が高くなります。
てこの原理でグイッとやると必ずといっていいほど部品が割れてしまいます。 そこで、コネクタを垂直に立てた状態で、ドライバの起こす角度を水平程度にしておきます(90度をわずかに越える程度)。そして爪を引っ掛けたまま、ドライバをそっと抜くように平行移動します。 爪をドライバで引きずってくる感じです。 わずかでも爪が爪穴から外れて内部に入ればOKです。ここで無理をして全部外してはいけません。
もし爪がすぐにもとに戻ってしまうようでしたら、別の精密ドライバなどを爪穴にさしておきます。
反対側も同じように、爪を爪穴からはずし、少しだけ内部に入れておきます。
次に、今度は爪穴に逆からドライバを差し込み、わずかな力で上方向に爪の部分を押し上げます。 左右、少しずつ交互に押し上げていって、両方とも外れればOKです。 ただし、このとき押し上げすぎると反対側の壁の部分が折れてしまうので、裏蓋が外れるか外れないかギリギリのところで止めておきます
次に少し太めの(先端幅2.1mm)のマイナスドライバをケーブルの穴から入れ、裏蓋をドライバーと親指ではさむようにして持ちます。 そして、横方向に引き抜くつもりで裏蓋を少しずつ引っ張ります。
この時、上方向に持ち上げようとしてはいけません。持ち上げようとすると反対側の壁の部分がすぐに折れてしまいます。
しかし、もし壁の部分が折れてしまってもがっかりする必要はありません。 この部分がなくても、それほど問題なく使えます。 実際に筆者も初期のころよく失敗しましたが、折れた部品をそのまま使っています。
うまくはずれると、次の写真のようになります。
ケーブルには端子が刺さっていますが、そっと剥がすようにすれば、外れます。 この時、ケーブルに刺さっていた端子が曲がってしまったら、マイナスの精密ドライバでまっすぐに直しておきましょう。曲がったままだと接触不良や短絡を起こしてしまうので丁寧にまっすぐにしておきましょう。
また、ついでなので、ケーブルを交換する前に端子部分を無水エタノールで拭いて綺麗にしておきましょう。
ケーブルの端を8mm〜9mmくらい、写真のように曲げて、裏蓋の真ん中にある穴にいれます。 そしてケーブルが浮かないように押さえながら前後に(写真では左右に)開きます。
このとき先端部分が裏蓋からはみ出していると、うまくボックスに入らないので、丁度のところでニッパーで切断します。わずかに短くても大丈夫ですが、あまり短すぎると端子が噛めないので接触不良になります。
裏蓋を閉じます。 このとき最初から裏蓋を斜めにして爪をいれようとすると、端子がまっすぐにケーブルに刺さらないので、なるべく裏蓋を水平において上からじわーっと押さえます。 なるべく前後が同じように沈み込むようにします。 最後はマイナスドライバの腹を当てて爪をしっかりと爪穴に入れます。
組みあがったら綿棒に無水アルコールを含ませて上の端子部分も綺麗にしておきます。
では、チェックしてみましょう。 左右の端子間の抵抗を測ってみます。 とりあえず短絡していなければOKです (実際には10MΩ以上の値になる)。 次にRCXに接続して、妥当な光センサの値がえられれば成功です。
もし光センサのLEDが光らないようでしたら、コネクタ部分での接触不良の可能性があります。 その場合は、光センサの仮組みをはずして、ハンダ付けした箇所とコネクタの端子部の間の抵抗を測ってみてください。本来は0に近い値になっているはずですが、そうでなければ導線に端子の爪が正しく刺さらなかったということなので、再度、端子の裏蓋を外して、爪が曲がったりしていないか確認します。
何度かやってもうまく行かないようでしたら、爪の端子を使うのをあきらめて、コネクタ内部でケーブルを直接はんだ付けしてしまいましょう。
最後に、接着剤で接着します。仮組みした時にピタッとくっついていれば、それほどたくさん接着剤をつける必要はなく、最初に切り取った4隅と爪の間に少し、それからケーブルを挟み込んでいる周辺に塗るくらいで大丈夫です。はめ込む爪の部分に接着剤を塗っておくと確かにに強力に接着できますが、将来また分解するときに面倒になります。
接着剤を塗って組み立てたら、輪ゴムなどでぐるぐる巻にして強く圧着させましょう (もちろんクランプがあれば、クランプの方がよいです)。 数時間圧着させればだいたいOKだと思いますが、1日おけば安心でしょう。
上の光センサのケーブル交換の後半を参考にしてください。 もとのケーブルと同じ長さにする場合は、17cmの導線を用意します。 もちろん好みに応じて長さは自由に変えられます。
RISのキットの中でおそらく最も修理が難しいのがモータでしょう。 実際、筆者も何度か分解して挑戦してみましたが、 手で回して滑らかに回る場合は内部端子のはんだ付けが外れていて修理可能だったものの、 あとはせいぜい外部端子の接触不良を改善する程度で、 「ローターが回らない」「カラカラ音がする」 というような症状のモータは修理できませんでした。
分解して分かった故障の原因は、主に次の二つです。
1つ目について。 ロータと磁石の間隔は本当にわずかですので、一部がはがれていたり、 あるいはロータと接触していたりすると、その破片などですぐにダメになると思います。 おそらく、モータの酷使による発熱や衝撃が原因かもしれませんが、未使用品のモータでもこの事例に遭遇したことがあるのでメッキの経年劣化も考えられます。
2つ目について。 外部から無理な力をかけてモータを 回そうとすると、外部へのシャフトと一体型になっているこのギアの歯が欠けてしまいます。 それだけが理由であれば、1つ目の原因で動かなくなったモータを分解して ギアを移植する、という手もなくはありません。
いずれにしても、モータの修理はそう簡単ではないので、無理な負荷をかけずに大切に使いましょう。
同じ9VでもRISに付属している旧タイプのモータと 最近のtechnicシリーズに付属している新タイプのモータでは接続端子が違います。
ところが幸いなことに、変換ワイヤー(ケーブル)も販売されていますので、これを使えば RCXで新タイプのモータが動かせます。
https://shop.lego.com/en-CA/LEGO-Power-Functions-Extension-Wire-8886
ケーブルの値段も少し高く(国内のamazonで1000円くらい)、 また、コネクタの高さの関係でRCX側のコネクタの向きが横か前方向に限定されてしまいますが (後ろ方向はダメ)、 まだまだRISを使いたいユーザにはかなりおすすめのアイテムです。
これまでRCXが正常に動作しなくなった例として、以下の症状があります。
さすがに5番目の場合は液晶を交換するしかないですが、他の事例はほとんど内部の接触不良が原因で、比較的簡単に修理できることが多いと思います。
(以下そのうち書く予定)
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